
「矯正って、保険は使えないの?」
そう思って調べ始めた方は、きっと多いはずです。
歯列矯正は一般的に自由診療とされており、数十万円から百万円を超える費用がかかることも珍しくありません。だからこそ、「少しでも保険が使えれば…」と感じるのは自然な気持ちです。
実は、矯正治療にも保険が適用されるケースがあります。ただし、対象となる症例は限られています。
この記事では、矯正治療で保険が適用される3つの条件、対象となる疾患の一覧、指定医療機関の探し方、そして申請時の注意点まで、わかりやすく整理してお伝えします。
倉敷市でロッソ矯正歯科を開院している院長の赤木です。当院は指定自立支援医療機関(育成医療・更生医療)および顎口腔機能診断施設の認可を受けており、保険適用の矯正治療に対応しています。現在育成施設として申請中で、許可がおりれば2026年5月から保険適用の矯正治療を開始予定です。ぜひ参考にしてください。
歯列矯正が「基本的に保険適用外」である理由
まず大前提として、歯列矯正は原則として健康保険の対象外です。
公的保険が適用される治療は、病気やけがによる療養に限られています。一般的な歯並びの改善は「審美的な目的がある」と判断されるため、保険の対象になりません。
また、矯正治療で使用する器具についても、厚生労働省が細かなルールを設けています。たとえばマウスピース型矯正装置は、器具自体が保険適用外のため、どのような症例であっても全額自由診療です。
「歯並びが悪くて噛みにくい」「見た目が気になる」といった理由だけでは、残念ながら保険は使えません。
では、どのような場合に保険が適用されるのでしょうか。次のセクションで詳しく見ていきましょう。
矯正治療で保険が適用される3つの条件
保険が適用される矯正治療は、大きく3つの条件に分類されます。
日本矯正歯科学会が定める基準によれば、以下の場合に限り保険診療の対象となる可能性があります。
条件①「厚生労働大臣が定める疾患」に起因した咬合異常
国が指定する先天性疾患を持つ方の矯正治療です。
唇顎口蓋裂やダウン症候群など、顎・口腔の発育に影響を与える疾患が対象です。これらの疾患に起因して咬合異常(かみ合わせの問題)が生じている場合に、保険が適用される可能性があります。対象疾患は全部で66種類が定められており、後述の一覧で確認できます。
この条件に該当する治療を行える医療機関は、「矯診(歯科矯正診断料算定の指定医療機関)」として届け出た保険医療機関のみです。

条件②前歯3歯以上の永久歯萌出不全に起因した咬合異常
永久歯が正常に生えてこない状態を「萌出不全」といいます。
前歯および小臼歯の永久歯のうち、3歯以上が萌出不全で咬合異常を引き起こしている場合が対象です。ただし、埋伏歯開窓術(まいふくしかいそうじゅつ)を必要とするものに限られます。
「歯が埋まっている」「なかなか永久歯が生えてこない」と言われた方は、この条件に当てはまる可能性があります。一度専門医に相談することをおすすめします。
条件③顎変形症の手術前・手術後の矯正歯科治療
顎の骨格に大きなずれがある「顎変形症」の治療です。
上顎前突(出っ歯)や下顎前突(受け口)、開咬など、顎の骨格に起因するかみ合わせの問題で、顎離断等の外科手術を必要とするケースが対象です。手術前・手術後の矯正歯科治療に保険が適用される場合があります。
この条件に対応できるのは、「顎診(顎口腔機能診断料算定の指定医療機関)」として届け出た医療機関のみです。当院はこの認可を受けています。
出典 公益社団法人 日本矯正歯科学会「矯正歯科治療が保険診療の適用になる場合とは」 より作成
保険が適用される2大ケース〜具体的な症例を解説
保険適用の矯正治療は、実際には大きく2つに分けて考えるとわかりやすいです。
ケース1〜口唇裂・口蓋裂などの先天性疾患
口唇裂・口蓋裂は、上唇や口蓋(口の天井部分)が裂けた状態で生まれてくる先天的な形成異常です。
哺乳障害が生じたり、歯の成長や歯並びに影響が出たりすることがあります。こうした先天性疾患に起因する咬合異常の矯正治療は、保険の対象となる場合があります。
子どもの頃に医科の先生から「口唇口蓋裂」や「症候群」と診断されたことがある方は、保険適用の可能性があります。まずは専門医にご相談ください。

ケース2〜外科的な治療が必要な顎変形症
顎変形症は、顎の骨格に大きなずれがある状態です。
「顔の輪郭が受け口で気になる」「顎がずれていて食べ物を噛みにくい」「通常の矯正治療では改善が困難と言われた」…そんな経験はありませんか?
こうした症状は、顎変形症の可能性があります。外科手術と矯正治療を組み合わせることで改善が期待できるケースがあり、その場合は保険が適用される可能性があります。ただし、顎口腔機能診断施設として認可された医療機関での診断が必要です。
自立支援医療制度について
もう1つ、知っておきたい制度があります。
「自立支援医療」という制度では、唇顎口蓋裂に起因した音声・言語・そしゃく機能障害の改善に関する医療に限り、1割負担で治療を受けることができる場合があります。
18歳以下の方は「育成医療」、18歳以上の方は「更生医療」の担当医療機関として認可された医療機関で受診することが必要です。当院は指定自立支援医療機関(育成医療・更生医療)の認可を受けており、現在育成施設として申請中です。許可がおりれば2026年5月からクリニックで保険適用の矯正治療を行う予定です。
出典 日本臨床矯正歯科医会「保険で治療可能な矯正歯科治療について」 より作成
厚生労働大臣が定める66の疾患一覧
保険適用の対象となる疾患は、現在66種類が定められています。
これらは主に、先天的な疾患や顎・口腔の発育に影響を与える疾患であり、咬合異常の原因となる場合に保険診療の対象となる可能性があります。
対象となる疾患の詳細については、当院ホームページ内の「保険適用の矯正治療について」のページにてご確認いただけます。
「その他顎・口腔の先天異常」については、顎・口腔の奇形・変形を伴う先天性疾患で、歯科矯正の必要性が認められる場合に、地方厚生(支)局への内議を経て保険対象となる可能性があります。
上記のリストに含まれていない疾患でも、相談し、該当する可能性があるか確認することが重要です。
出典 公益社団法人 日本矯正歯科学会「矯正歯科治療が保険診療の適用になる場合とは」 より作成

保険適用の矯正治療を受けるための指定医療機関の探し方
保険が適用される矯正治療は、どの歯科医院でも受けられるわけではありません。
厚生労働大臣が定める施設基準に適合し、地方厚生(支)局長に届け出た保険医療機関のみで受けることができます。
指定医療機関の種類
指定医療機関には2種類あります。
- 矯診(歯科矯正診断料算定の指定医療機関)…先天性疾患・永久歯萌出不全に対応
- 顎診(顎口腔機能診断料算定の指定医療機関)…顎変形症の外科的矯正治療に対応
当院ロッソ矯正歯科は、顎口腔機能診断施設(顎診)および指定自立支援医療機関の認可を受けています。
指定医療機関の調べ方
お住まいの地域の指定医療機関を探す方法をご紹介します。
- 地方厚生局のホームページ(https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/)にアクセスする
- サイト内検索で「施設基準届出受理医療機関名簿」と入力する
- 県別の受理医療機関から歯科のPDFを探す
- PDFの中から「矯診」または「顎診」の指定医療機関を探す
なお、名簿に掲載されていても、実際に保険の矯正治療を行っているかどうかは医療機関によって異なります。事前に各医療機関に直接ご確認いただくことをおすすめします。

倉敷市での保険適用矯正治療について
岡山市には保険適用の矯正治療ができる認可施設が複数ありますが、倉敷市では対応できる施設が限られています。
当院は倉敷市新田に位置し、倉敷市で保険適用の矯正治療を提供できる認可施設の一つです。他院で「治療が困難」と断られた場合でも、対応できるケースがありますので、歯科医師へ相談し、保険適用の対象となるか確認することが大切です。
保険適用の矯正治療を受ける際の注意点
保険が使えるとわかっても、いくつか注意しておきたいポイントがあります。
注意点①対応できる症例は限られる
これが最も重要な点です。
「歯並びが気になる」「噛み合わせが悪い」という理由だけでは、保険は適用されません。前述の3つの条件のいずれかに該当する必要があります。一般的な審美目的の矯正治療は、保険の対象外です。
まずは専門医に診てもらい、保険適用の対象かどうかを確認することが大切です。
注意点②使用できる矯正装置が限られる
保険診療では、使用できる医療材料が定められています。
マウスピース型矯正装置(インビザライン)は器具自体が保険適用外のため、保険診療では使用できません。保険が適用される矯正治療では、保険で認められた医療材料を使用する必要があります。
注意点③医科の紹介状が必要な場合がある
先天性疾患が原因の場合、医科の医療機関からの紹介状等で傷病名の確認が必要になる場合があります。かかりつけの医科の先生と連携しながら進めることが大切です。
注意点④保険適用外でも医療費控除が使える場合がある
保険が適用されない場合でも、医療費控除の対象となる可能性があります。
1年間に支払った医療費の合計から、保険金などで補填される金額を差し引いた額が一定額を超える場合、医療費控除を受けられる可能性があります。所得が200万円以上の場合は10万円を超える部分が対象となります。矯正治療費が高額になる場合は、確定申告で医療費控除を申請することで、税負担を軽減できる可能性があります。詳細は税務署や税理士にご確認ください。

こんなお悩みがある方はご相談ください
以下のような状況に心当たりはありますか?
- 歯並びだけでなく、顔の輪郭が受け口で気になる
- 顎がずれていて、食べ物を噛みにくい
- 他院で「通常の矯正治療では改善が困難」と言われたことがある
- かかりつけ歯科で「大人の歯が元々少ない」と言われた
- 「歯が埋まっている」と言われ、改善方法が知りたい
- 上の歯が年々出てきた気がする
- 子どもの頃に口唇口蓋裂や症候群と診断されたことがある
- 保険適用の矯正治療があると聞いたが、詳しく知りたい
これらのお悩みは、保険適用の矯正治療で改善が見られる可能性があります。
当院では、完全予約制で初診相談を実施しています。治療費・治療期間・治療方法について、ご説明を行っています。
まとめ〜矯正の保険適用は「限られた症例」に対応するもの
矯正治療の保険適用について、ポイントを整理します。
- 矯正治療は原則として保険適用外(自由診療)
- 保険が適用されるのは3つの条件に該当する場合のみ
- 厚生労働大臣が定める66種類の疾患に起因した咬合異常が対象
- 顎変形症は外科手術を伴う場合のみ保険適用の可能性がある
- 永久歯萌出不全は前歯3歯以上・埋伏歯開窓術を必要とする場合が対象
- 保険診療を受けられるのは指定医療機関のみ
- 保険適用外でも医療費控除が使える可能性がある
「自分は対象になるのかな?」と思ったら、まず専門医に相談することがひとつの方法と考えられます。
当院は倉敷市で保険適用の矯正治療を提供できる認可施設の一つです。他院で断られた方も、歯科医師へ相談し、保険適用の対象となるか確認することが大切です。
保険適用かどうかの判断から、治療方針のご提案まで、ご説明を行っています。
マウスピース型矯正装置(インビザライン)に関する注意事項
※マウスピース型矯正装置(インビザライン)は、医薬品医療機器等法(薬機法)の承認を受けていない未承認医療機器です。
※海外で製造され、国内の販売代理店を通じて入手しています。
※国内にも薬機法の承認を受けたマウスピース型矯正装置は複数存在します。
※医薬品副作用被害救済制度の対象外となる場合があります。
著者情報
ロッソ矯正歯科 院長 赤木 秀瑛

略歴
2011年 神奈川歯科大学 卒業
2011年 岡山大学病院卒後臨床研修センター 歯科臨床研修
2012年~ たい矯正歯科 常勤
ちゅうりっぷ歯科 非常勤
2015年~ 岡山大学大学院 医歯薬学総合研究科 顎口腔再建外科学分野 社会人大学院生
2019年 日本成人矯正歯科学会 認定医取得
2021年 ロッソ矯正歯科 開院
資格
歯科医師
衛生検査技師
日本成人矯正歯科学会 認定医
所属学会
日本矯正歯科学会
日本成人矯正歯科学会
日本舌側矯正歯科学会
日本口蓋裂学会
日本小児歯科学会
日本先進矯正歯科学会